麻雀パラドックス4局

何かを守るには何かを捨てなければならない。
大切なことは、何を守って何を捨てるかだ。

その選択が正しいのか間違っているのか、その時には分からない。

多分答えはいつも同じである。

選択したものに対して努力を惜しまなければ

答えはいつも正解を導く。

彼との麻雀は刺激的であった。

勝負に負けて彼に教えを乞いた私には恥ずかしさを凌ぐ新鮮さがあった。

彼との相性の良さは趣味が一緒だったことだ。

読書や映画鑑賞。

本の貸し借りをしたり、一緒にDVDを観たりと、
飲みに行っては麻雀の話だけでは無く、趣味の話に時間を忘れ
彼との信頼関係は深まっていった。

麻雀の話と言えば、いつも私へのダメだしだww

なんでそうなの? こうしなよ!ああしなよ!

時には理不尽なこともあったがとにかく私は吸収したかったのだ。

彼の麻雀センスを。

麻雀戦術については後の話で語るとして・・・・

私は自分を磨くべく高いレートのお店へも出入りするようにした。

行きつけの歯医者さんから紹介してもらった
マンション麻雀である。

ここのルールは1局精算でレートはちょっと書けないww
親に跳満打てば2ケタ近いレートだ。

客層は、近くにある東大病院の教授さんや、区議会議員
あっち系の人やら、おぼっちゃま大学生、様々だ。

漫画のような世界に私は初めて飛び込んだ。

そこでも負け続けた。

そこの常連さんから言われる事は彼から言われることと全く同じだ。

『本当に自己中麻雀だな~』だ。

『自己中麻雀とはいったいなんだ?』

麻雀って自己中に打ったらいけないのか?

この辺の話も後ほどしていくが、

とにかく私は麻雀というものに没頭した。

全てのギャンブルをやめて、時間のある限り麻雀を打った。

月に平均400半荘以上だ。

打っては怒られ、打っては怒られ

とにかく麻雀といものと、麻雀を打つ人達と向き合った。

彼に麻雀を教わり2年経った35歳の時に、ゴースタのオーナーさんから
お店を閉めるという話を聞いた。

社員、アルバイト全員退職してもらうとのこと。

オーナーさんに『私がお店をやります』

そう言って私は3日後、17年間勤めたホテルの辞表を出す。

社員は3人アルバイトは彼を含め7人

みんな楽しい仲間だ。

と私は思っていた。

とにかく黒字経営にしなくてはいけない私はお店の接客に力を入れた。

スタッフ一人一人に声をかけ、やる気を出させお店を1つにしようと頑張った。

結果は3ヶ月で出た。

ここから一気にいこうと思った矢先に社員から声があがる。

『彼を辞めさせて欲しいとのこと・・・』

その頃の彼は私の一番の親友で、仕事も一緒に頑張ってきたつもりだったが

社員はそうではなかった。

簡単に言えば彼の仕事ぶりが気に入らなく
ただ、誰も彼に注意出来ないのだ。

彼の存在は麻雀では大きく、彼の態度もまた大きくなっていったのだ。

社員の意見はこうだ。

『徳山さんの目指しているお店と彼の仕事は合わないとのこと』

彼の業務態度を許せばお店はこれ以上良くならないです。

今の今まで黙認してきた社員が何を言ってるんだと思ったが、

私は今このお店の舵取りをしている。

クルーの気持ちも考慮しなくてはならない。

確かに私が理想とする麻雀店に彼は必要か・・・?

私は1週間本当に悩んだ。

たどり着いた答えは

彼は接客が好きなのでは無く、一人の麻雀打ちなのだ。

私は彼を仕事終わり飲みに誘い彼に辞めてもらうことを伝える決意した。

乾杯する前に彼に『話がある』と言ったところ

彼が『今日は俺の送別会だよね?』そう言った。

え?っと聞きなおすと

『徳山さんは麻雀も悩みも分かりやす過ぎる』と答えてきた。

私は彼にごめんと言おうとしたが、

ありがとうという言葉を選んだ。

私は最後に彼にこう言った。

『俺はいつも後ろでお前が見ていると思いながら麻雀打つよ

だから必ず強くなって、もう1回お前と勝負する。

2年前と同じルールで』

彼は『絶対負けねー』と笑顔で答えてくれたが
その後10年近く経つが彼との勝負はまだしていない。

何かを守るには何かを捨てなければならない。
大切なことは、何を守って何を捨てるかだ。

その選択が正しいのか間違っているのか、その時には分からない。

多分答えはいつも同じである。

選択したものに対して努力を惜しまなければ

答えはいつも正解を導く。

あの時お店のために彼を辞めさせてくれと言ったスタッフ達はもういない。

そして彼ももういない。

私はいつもお店を優先に経営者としての選択をしてきたつもりだ。

その選択を正解に導くために日々努力しているつもりだが、

彼がもし近くにいたら『麻雀も経営も自己中だな』と言われるかもしれない。

そろそろ麻雀のことでも書きますか~

麻雀パラドックス5局でのお話。。

 

麻雀パラドックス5局

人間とは言い訳を探す天才である。

筋トレしよう!マラソンしよう!ダイエット、禁煙、勉強、仕事・・・

ツラくなった時に辞める理由を探すのは天下一品だ。

だが、麻雀の言い訳ほど自分を慰められないものはない。

 

彼が去ったあとも私は麻雀に明け暮れた。

勝ちたい、強くなりたい、彼に認めてもらいたい。

休みの日はマンション麻雀に出向きとにかく麻雀を打ちまくった。

マンションの常連のお客さん(Kさん)からある日昼飯の誘いがあった。

その人はキャバクラを経営してる42歳、私より年上で麻雀の腕は今思い返しても強かった。

その人が私に聞いてきた。

『徳山くんは何で麻雀やってるの?』

私は気の利いた言葉を返せず『強くなりたいからですかね~』と素直に言ってみた。

すると、『何で強くなりたいの?』

なんでって・・・当たり前じゃないの?

『勝ちたいからです』

『何に勝ちたいの?』

何に?・・・

『彼に???かな~』

私は彼との経緯をその人に話した。

『彼に勝つってどういうこと?』

『そのルールで勝ったとしてそのあとは?』

私は言葉に詰まった。

何でこんなに必死に麻雀やってるのかな~と初めて考えた瞬間だった。

 

そもそも麻雀で勝つってどういうことだろう。

囲碁や将棋と違って勝ち続けることの出来ないもので『勝つ』とは?

昨日は負けた。

今日は勝った!

そんなゲーム性のある麻雀というもので『勝つ』の意味を考えた。

1半荘で答えは出せないが、10半荘なら?100半荘なら?

100半荘どうなったら勝ちでどうなったら負けなのか?

そんなことを考えながらマンションで麻雀を打っていた。

順番待ちのKさんが後ろで見てた。

1局精算のルールなので1局1局が勝負である。

白、発を鳴いてる人がいて、私は中単騎でリーチをかけた。

親の役無しドラ3である。

結果は私が白発鳴いてる人へのホンイツ満貫放銃だ。

Kさんが『徳山くんなんでリーチ打ったの?』

『だって中打てないし・・・』

『で?』

『だってドラ3ですし』

『で?』

『結果満貫放銃だよね?』

『でもそれは結果論じゃないですか?』

『徳山くんっていつもそうやって自分に満貫放銃した言い訳を考えながら麻雀打ってるの?』

『どうして満貫放銃の結果になったのかは考えないの?』

『結果論って結果が一番大切なんじゃない?』

『自分が放銃した結果に言い訳をつけたら何か結果が変わるのかな?』

『言い訳しながら麻雀打つのは1番楽だよ』

 

私の正論はKさんの正論に滝に討たれてるかのようなものすごい勢いで

全て消された。。。

あとに残ったものは羞恥心と怒りだった。

何を怒ってるんだろう。

Kさんにか?

自分にか?

麻雀にか?

ちくしょう、ちくしょうと何回頭を駆け巡っただろうか。

それでもまだ、中単騎でのリーチを正当化させる理由を考えていたのだ。

満貫放銃してしまったことよりも・・・

 

人間とは言い訳を探す天才である。

筋トレしよう!マラソンしよう!ダイエット、禁煙、勉強、仕事・・・

ツラくなった時に辞める理由を探すのは天下一品だ。

そして、麻雀の言い訳ほど自分を慰められないものはない。

 

麻雀パラドックス6局へ続く

 

麻雀パラドックス6局

ドリブルをしている。

周りは敵だらけだ。

誰にパスを出すか考えるな!

きっとそこに走ってくれるはずと思い、今は誰もいないスペースへパスを出せ。

 

中単騎のリーチを打った私は考えた。

私の代名詞である『自己中』を払拭するために。

そもそも私は何を期待してリーチをかけたのだろうか?

出アガリか?

ツモあがりか?

理由は簡単に見つかった。

ただ、中が打てなかったからである。

でもドラ3で親番だったからあがりたかったからなのだ。

まてよ?

あがりたいのに1番出アガリしにくい中単騎でリーチを打つことは正解なのか?

確かに中は打てない、いや、打っても良いのかもしれないが、私の麻雀美学がそれを邪魔した。

なぜ、あの時オリの選択がなかったのだろうか?

中以外にも打ちずらい牌があったはずなのに・・・

もしかしたら白發鳴いてる人から中が出たかもしれない。

それ以外の人が中を切ってリーチと言ったかもしれない。

その中であがれないのが嫌でリーチを打ったのか?

その理由だけか?

いや違う。

私は中待ちをツモって、みんなにどうだ!って思わせたかったのだ・・・

もちろん中単騎をダマテンでアガリ逃しをしてもあがれないと決まった訳ではない。

そこからでも勝負出来るように手を崩さず打ててたのかもしれない。

ただ、あの時の自分の発想を要約するとこうだ。

中は打てない。

ドラ3の親番。

あがりたい。あがりたい。

これをツモってみんなにどうだ!っと思わせたい。

 

あ~恥ずかしい。

麻雀強くなりたい?

Kさんが私の麻雀を見て罵声を浴びせるのも当然だ。

私は麻雀を楽しみたいではなく、強くなりたいと言ったのだから。

麻雀に明け暮れてるだの、とにかく打って打って彼に追いつきたいだの

努力をさんざん歌って、なぜリーチをかけた?に言ったセリフが

中打てないし、ドラ3だし・・・

 

後日、Kさんに言った。

あのリーチはダメでしたね。

自分のことしか考えてなかったです。

 

リーチを打つということはそれ以外の全ての危険牌を打つことになる。

親でドラ3ある現実と、現状打てない中を抱えてる現実

待ち的に不利ではあるがチャンスがない訳ではない。

しかし、リーチを打ってしまった時点でそのチャンスは激減するだけでは無く、放銃リスクのおまけ付きだ。

他家の動きも見ながら中単騎のダマで息を潜める方が得策でした。

 

ここで言いたいのは中のリーチの良し悪しでは無く、

リーチに至る自分の引き出しの少なさだ。

打てない牌待ちでリーチするのは悪くないが、

そのリーチを打つ状況だったのか?ということの方が大事。

自分の愚形リーチによって捌き手の人の手まで殺しかねない。

その結果が招いた満貫放銃だった可能性もある。

もし、どうしても、どうしてもあがりたいのなら中を切って違う待ちでリーチを打った方があがれる可能性は高い。

ただ、どうしてもどうしてもの時だ。

 

麻雀は4人で打っている。

決して1対1の対局ではない。

自分の考えてる事は誰でも分かる。

対局者がどう考えているかの方が大切である。

 

ドリブルをしている。

周りは敵だらけだ。

誰にパスを出すか考えるな!

きっとそこに走ってくれるはずと思い、今は誰もいないスペースへパスを出せ。

麻雀パラドックス7局へ続く。。

 

それでは皆様、また明日麻雀パラドックスでお会いしましょう★

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アミューズ
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