手が届きそうで届かないものって何があります??

マイホーム? 高級車? 高価なアクセサリー?

 

あの時僕が1番手にしたかったものは・・・・・・

 

Bリーグの春の大会を優勝したアパッチは 夏の大会も優勝して

とうとう Aリーグへと駆け上がった!

 

大学1年も終わろうとしているY本くんとH原くんは

去年よりも体がたくましくなり、より頼りになるバッテリー&3番 4番となっていた。

 

Aリーグは 8チームとなっており どのチームも強豪ばかりである。

Aリーグだけは 春夏ともにリーグ戦となっており

4チームの2ブロック 上位2チームが準決勝 決勝となる。

 

もちろん下位2チームはBリーグへと降格になるため

どの試合も気が抜けない。

 

初めてBリーグに昇格した時とは違い

不安よりもAリーグでの優勝を目標にしている

アパッチの姿がそこにはあった。

 

Bブロックを2勝1敗で 2位通過

準決勝は Aブロック3勝で1位通過のチーム

去年Aリーグで 春優勝 夏準優勝のチームである。

 

とうとう 和光市の頂点にいるチームとの対戦である。

 

整列した時に相手の強さがよく分かる。

ユニホームのどこが破れているのか、 よくスライディングしている証がそこにはたくさんあった。

 

相手チームは15人全員が10代~20代

アパッチは10人

相手チームが少しでも油断してくれればと 甘い期待はすぐさま消えてなくなった。

 

先攻のアパッチ 1番 2番 3番 連続三振。

相手ピッチャーは うちのY本くんと同等 ストレートは相手ピッチャーの方が早いかもしれない。

 

しかし うちのY本くんも負けてはいない!

マウンドに行くとき『燃えるわ~』と笑顔でつぶやき向かっていった。

 

連続三振とはいかないが こちらも三者凡退で好スタート。

 

最初のチャンスは4回の表アパッチの攻撃である。

 

先頭バッターは2番バッターの私から

カウント 2-3から 5球粘ってフォアボール

思わず『ヨッシャー』と雄叫びをあげてしまった。

3番Y本に出たサイン 送りバント!?

 

Y本くんから了解の帽子をさわるサイン。

 

教科書道りのバントで 1アウト ランナー2塁

バッターは4番 スマイル フジである。

ベンチも盛り上がるその刹那

 

キャッチャーが立ち上がった!?

なんと敬遠である。

 

草野球で敬遠?

しかし2塁ランナーの僕は正直嬉しかった。

 

和光市のチャンピオンチームが アパッチとの対戦で敬遠である。

それと同時にこのチームは本物だと確信した瞬間である。

 

5番バッターは いつもバッティングセンターを共にしているH嶋。

彼も努力家でスポーツジムやバッティングセンターで自分を鍛え上げている。

 

カウント1-2から ヒットエンドランのサイン

うちのチームも結構やるな! 確認の帽子をさわりながら ついニヤけてしまう。

 

ピッチャーが足をあげた瞬間 俺もフジも走る!

H嶋が打った打球はセカンドゴロ

ランナーが走っているため セカンドはベースに入ろうと ガラ空き状態

 

ライト前ヒット 待望の先取点である!

 

その後 完全な投手戦で迎えた最終回

この回を抑えれば決勝進出である。

 

1アウトからフォアボール

次のバッターの打球がまさかの ホームラン!?

ラッキーにもエンタイトルツーベース

 

1アウト 2塁3塁

ワンヒット サヨナラという場面

 

前進守備の指示 1点も与えないという守備体型

 

ピッチャー Y本渾身の投球で 三振!

ガッツポーズがでる

 

2アウト 2塁3塁

守備は定位置へ

 

相手のバッターは4番である。

 

1塁が空いている

 

ショートの鬼コーチY原がタイムをかけ マウンドへ

内野陣が集まる。

 

『どないする?』

『指示に従います』

 

『Y本くんの気持ち言うてみい』

『勝負したいです』

『ダメですか?』

 

『アホか』

『敬遠するなんて言ってたら 俺が投げようかと思って聞いてみたんや』

『勝利を手にするのは 勝ちたいと強く願ったチームや』

 

『勝つのはどっちや~!』

『アパッチ~! よっしゃー!!』

 

カウント2-2からの5球目

 

カキーン!!

 

俺の頭上をボールが飛んでいく。

 

届きもしない手を 思い切り伸ばしてみる

 

俺の手からどんどんボールが離れていく。

 

俺の手とボールは空中で重なっているのに

 

伸ばしても 伸ばしても 届かないボールは フェンスオーバー

 

サヨナラホームランだ。

 

そのあとの事はよく憶えていない。

 

ただY原さんがマウンドでY本くんの肩をポンポンと叩いていた。

 

あの日手に届きそうで届かなかったものは

お金では買えない 勝利 であった。

 

でも今私は思う。

 

あの時勝利のボールは僕の手に届かなかったが

あの時マウンドで勝負しようと決意した 強い気持ち!

それを全員が望みワクワクした瞬間!

 

今も私の胸にしっかりと残っている。

 

最後の一球へ続く。

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アミューズ
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